過去は変えられる!?過去はいったいどこに存在するのか
前回は、
「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」
byエリック・バーン氏
の「他人」についてお話してみました。
▶他人は変えられないってホントなの?あなたが見てる他人はあなたが作った他人
今回は「過去」について書いてみたいと思います。
過去はどこにある?
「過去」というのは、そのまんま。過ぎ去ったときのことで、「未来」でもなく「現在」でもない時間の区分ですね。
今こうしている瞬間にもどんどん時間は流れ、わたしが「過去は変えられないのか?」というタイトルを入力したのもあなたがそのタイトルを読んだのも、すでに過去のことです。
では、過去はどこにあるのでしょうか?
斜めな言い方ですが、物理的な過去はどこにもありません。
誰かと一緒に過ごした時間も、その瞬間は共通のものですが、過去になった途端それぞれの脳内に「エピソード記憶」として刻まれ、できごとそのものは消失してしまいます。
「エピソード記憶」は、経験だけでなく、そのとき付随情報(時間・場所・感情)もセットになっている記憶されるので、体験したそれぞれの性格や価値観などが反映され、同じ経験をしていても記憶はひとりひとり異なるものになります。
同じジェットコースターに乗った経験でも、めっちゃワクワクした記憶になるか、死ぬほど怖い記憶になるかはちがいますものね。
つまり、過去そのものは過ぎた時点で消失していて、その代わりに各々の脳内の記憶庫に「エピソード記憶」として保管されているというのが本当のところです。
記憶は思い出すたびに上書きされる
そして、とても興味深いのですが、エピソード記憶は思い出したときにいったん消去されて、新たな記憶として刻み直されると言われています。
わたしたちが記憶を再生する仕組みは、DVDに刻まれた情報をただそのまま画面に映し出すのとはちがってて、記憶庫の中からいったん取り出して、再生してまた元に戻すというアナログなやり方なのです。
倉庫から出して外気に触れる過程で、その出来事が起きてから現在に至るまでに仕入れた情報(事後情報)が混入してしまい、記憶の内容を改ざんしてしまうことがあるだそうです。
そのことを解説しているこの動画がめちゃくちゃおもしろいので、お時間のある人はぜひ観てください。
20世紀で最も影響力のある100人の心理学研究者の58番目に選出された、アメリカの心理学者エリザベス・ロフタスさんのTED Talkの動画です。
動画の中で、ロフタスさんは
「記憶はむしろWikipediaのようなものです。自ら内容を書き換えることも出来れば、他人が書き換えることもできます。」
と言っています。
そして、実際のデータ数値も用いて以下のことを述べています。
ある研究では、模倣事故を見せこう聞きました。
「車がぶつかったとき、速度はどれくらいだったか?」
別の人たちにはこう聞きました。
「車が激突したとき、速度はどれくらいだったか?」
「激突」という言葉で質問をしたとき、証人たちが証言する車の速度は上がり、さらに「激突」という言葉を使うことによって、ある証言を得る確率が上がりました。
事故現場でガラスが割れているのを見たというのです。
実際はガラスは割れていなかったのです。
つまり、「激突」という後から加えられた情報(事後情報)によって、オリジナルの記憶データが改ざんされてしまっているということを示しています。
エピソード記憶は事後情報に触れると、元々の記憶がその情報に沿った形に変容してしまうのです。
冤罪怖いですよね~
クリスマスパーティーの苦い記憶
わたしにはこんな苦い記憶があります。
小学校5年生の時、お友だちのうちのクリスマスパーティーにお呼ばれをしました。
その子は社長の娘さんで(もちろんお金持ちで)、自宅に併設された会社の寮にある会議室かなにかで大勢クラスメイトを集めてパーティーをするということだったと思います。(すでに記憶があいまいw)
参加する人は、プレゼント交換のためにひとり500円までのプレゼントを買って、当日持っていくことになっていました。(金額もあいまいw)
学校から帰って母にそのことを言うと、怪訝な顔で100円玉(!)を渡されたのを覚えています。
たしか文房具屋さんでノートを買って持っていきました。
100円で買える、めいっぱい大きくてキャラがついてるものがそのノートだったんです。
包装紙にシールリボンもつけてもらいました。
↑ほら、こういうの。ありましたよね?ww
「500円まで」だから決してルール違反ではないのだけれど、その後のお友だちの反応とわたしの惨めさについてはご想像にお任せします。
・・・小5のわたし、かわいそうでしょ?
と、この一連の記憶、わたしにとっては長らく100%(ワンハンドレッドパーセント!)正しい記憶のつもりだったのですが、ロフタスさんの理論によると、クリスマスの度に思い出しているので(つまり最低でも30回以上は!)、何度も何度も事後情報にさらされていて、まったくあてにならないものだということになります。
考えてみたら、いくらうちがそんなに裕福でなかったとはいえ、500円のプレゼント代を払ってもらえないってことはちょっとありえなくて、たぶんその前にわたしがなにか高いものをおねだりしたとか、母親を怒らせる何かをやらかしたとか、たまたま母の財布に500円が無かったとか、きっと何かしら理由があったのだと思いますが、そこは都合よく記憶データから抹消されて、悲劇のヒロインの悲しきクリスマスの記憶として刻まれているのです。
そんなわけで、ロフタスさんのすばらしいトークと、わたしの小さなクリスマスの昔話で、記憶がいかにあいまいであてにならないものか、お分かりいただけましたでしょうか。
このまえひさしぶりに学生時代の友だちと4人とZoomで話したら、最後に会った時期と場所の記憶がみんなバラバラで笑ちゃいましたし、
夫婦喧嘩でも、
「あのとき〇〇って言ったじゃない。」
「いやいや△△って言ったんだよ。」というやりとりはしょっちゅうしてますw
それぞれが自分にとって都合よく記憶を改ざんして、それをあたかも事実のように思い込んでいるんですから、この世からいざこざや裁判がなくならないのもムリありません。
「わたしは記憶力いいから」なんて過信していると、気づかぬうちに記憶は書き換えられてしまうのです。
過去にとらわれるのはもったいない
以前、こんな記事を書きました。
過去を振り返ることは、自分の中に蓄積されている「未消化の感情」に気づくことができ、トラウマ解消に役立つというお話です。
でも、これだけ過去の記憶があてにならないものだとすると、過去を振り返ることにいったい何の意味があるだろうと思いませんか?
わたしも一度はそう考えたんですが、そこで気づいたのが、癒すべきなのは悲しい記憶ではなくて、「悲しい」という感情そのものなのです。
この記事の中でも、
>たとえ思い込みだったり勘違いだったとしても、あなたが「そう感じた」ということは事実だからです。
と書いたとおり、出来事はどうあれ、その記憶に対して「悲しい」という感情を抱いている限り、その人にとってそれは悲しみのトラウマであり、未消化の感情なんです。
その感情に気づいて心を寄せ癒してあげる(インナーチャイルドヒーリング)と、悲しい記憶はだんだんと懐かしいだけのセピア色の思い出に変わっていきます。
それを証拠に、わたしのクリスマスの話は、以前は思い出すたびに胸がジクっと疼くしんどいエピソードでしたが、今はこうやって立派に教材として、笑いのネタとして、活躍してくれています。
わたしがお伝えしたいのは、「記憶なんて曖昧だから気にするな!」ということではなくて、
過去は過ぎた時点で消失していて、記憶として自分で作っているものだから、未消化の感情を癒すことで捉え直しができる。
だから、いつまでも悲しい記憶のまま持ち続けるのはもったいないんですよということです。
たとえ許せないと思う人がいても、過去はすでに消失しており、相手には別のエピソード記憶が存在して、それは相手の脳内で都合よく書き換えられているものです。
もちろん、道義的な責任を求めることはできますが、感情的に「ゆるさない!」と歯を食いしばって悲しい記憶のまま握り続けていても、残念ながらあなたが苦しむだけなんですよね;;
つらい記憶は、他人からの謝罪によって癒されるものではなくて、自分で感情を癒すことによって意味づけを変えることができるのです。
まとめ
今日のまとめです。
- 過去そのものは過ぎた時点で消失していて、その代わりに各々の脳内の記憶庫に「エピソード記憶」として保管されている。
- エピソード記憶は思い出したときにいったん消去されて、新たな記憶として刻み直される。取り出してる間に事後情報に触れると、元々の記憶がその情報に沿った形に変容してしまう。
- 過去は存在せず、自分の脳内で記憶として保管しているものだから、未消化の感情を癒すことで捉え直しができる。いつまでも悲しい記憶のまま持ち続けるのはもったいない。
- つらい記憶は、他人からの謝罪によって癒されるものではなくて、自分で感情を癒すことによって意味づけを変えることができる。
前回と今回で、「過去と他人は変えられない」についてわたしなりの見解をお話してきました。
結論、「過去と他人は変えられないけど、過去と他人への自分の認知は変えられる」でした。
他人の考え方を力づくで変えたり、過去をなかったことにすることはできませんが、自分の中での意味づけを変えることは可能です。
意味づけさえ変えることができれば、何もコントロールしなくても、今すぐ幸せになれます。
あなたの中のイヤな他人やネガティブな過去、ぜひ変えてみてくださいね^^
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